大阪高等裁判所 昭和24年(を)3123号 判決 1950年7月11日
被告人
有信之雄
主文
原判決を破棄する。
本件を京都地方裁判所舞鶴支部に移送する。
理由
弁護人坂本一郎の控訴趣意第一点について。
弁護人は原審は起訴状記載の訴因が被告人の主要食糧輸送の単独犯であるのに訴因を変更せずして他人の主要食糧輸送に対する被告人の幇助の事実を認定したのは違法であると主張するので、記録を調査するに、起訴状記載の第二事実は、被告人は法定の除外事由がないに拘らず昭和二十四年二月十九日頃浜口茂三方から京都市迄精米一石二斗及び小豆六斗を輸送したというのであるが、原判決の認定するところは、被告人は昭和二十四年二月十九日頃浜口茂三が法定の除外される事由がないにかかわらず精米一石二斗ばかりと小豆六斗ばかりを宮津町から京都市迄輸送するに際し情を知りながら浜口に代つて自動車に乗りこみ積荷の監視をなし浜口の行為を幇助したものであるというにある。而して右起訴事実は被告人が自ら主食を輸送したというに対し、原審認定の事実は被告人は浜口茂三の主食輸送行為を幇助したというのであるから、訴因に変更のあること明らかである。訴因を変更せずして起訴状記載の訴因と異る事実を判決で認定できる場合は起訴状に記載された或る罪の構成要件の中に判決で認定せんとする別の罪の構成要件も包含されていると認められる場合に限るべきものと解する。然るに原審公判調書によれば、刑事訴訟法第三百十二条の訴因変更の手続を履践した形跡がないし被告人が自ら主食を輸送したという訴因の中には被告人が他人の主食輸送を幇助したという訴因は包含されていないと考えられる。従つて原判決は審判の請求を受けない事件について判決をしたものであつて、破棄を免れない。